意味
利他(りた)とは身を煩(わずら)わせ、心を悩(なや)ませながら生きている私たちを救うために、苦しみの根本を抜き、真の喜びを与えようとはたらいている阿弥陀さまの心。
利他真実(りた)の信心。真(まこと)の喜びとは、一人で独占できるものではなく、一人で完結もすることもない、いのちあるものすべてと分かち合うことのできる喜びだと味わっています。
解説
他力・本願力と同じ意味で、他力とは利他の力(はたらき)をあらわします。利他とは他を利することであり、自(阿弥陀さま)が他(私たち衆生)に真実の利益である南無阿弥陀仏の名号を施与(せよ)することです。
名号のはたらきによって浄土に往生しさとりの智慧(ちえ)をえて、大慈悲心をおこし迷いの世界に還(かえ)り苦悩の衆生を救済する。そのすべてが利他(りた)のはたらきです。
いのちはつながりあって相互に関係し合いながら存在しているのですから、私一人の救いでは完結しません。いのちあるものすべてが救われるときに私の救いも完結します。私一人の救いで完結するのであればそれも自己中心の救いということになります。
仏教の根本は自利利他(じりりた)です。自らの幸せが即ち他の幸せであり、他の幸せが即ち自らの幸せとなる、そのような幸せです。
阿弥陀さまは悩み苦しむ私たち衆生を救うために、苦しみの根本を抜き、真の喜びを与えようと願われました。そして功徳の全てを南無阿弥陀仏の名号におさめて、私たちに平等に与えて下さいました。
悩みの多い人生ですが、阿弥陀さまの願いを聞き、お念仏を称え、利他の力(はたらき)におまかせして多くの仲間とともに生きて往くことを、お勧めくださったのが親鸞聖人です。
語句
利:真実の利益すなわち南無阿弥陀仏の名号のこと。
他:阿弥陀さまから見た私たち衆生のこと。
真実之利:真実の利益。阿弥陀仏の本願名号によって得る利益をいう
出拠 親鸞聖人『教行信証』
「群萌(ぐんもう)を拯(すく)ひ恵(めぐ)むに真実の利をもつてせんと欲すなり。」註釈版聖典135頁
「これを利他真実(りたしんじつ)の信心と名づく。」 註釈版聖典235頁